財務諸表分析~ホテル業界篇

 なにか副業を始めてみたいな~と思っても、どこから手をつけていいのか分からないものです。なにか事業を始めるなら、たとえ小さい規模であっても、他の人がどんな風に収益を上げているのか知っておく必要があります。「彼を知り己を知れば百戦殆(あやう)からず」です。

 簡単に得られる企業情報の一つに財務諸表があります。まずは手に入れやすいものから手に入れて自分なりに分析できる力を身に着けることが大切です。

 とは言え、財務諸表は基本的な知識がないと、そして慣れていないと、大変に読みづらいものです。ここでは、有価証券報告書(以下、「有報」)を取り上げて、どんな風に読んだらいいのか、をご説明したいと思います。

 今回取り上げるのは、株式会社レッド・プラネット・ジャパン(証券コード:3350)(以下、「RP社」)です。

 なぜこの会社を取り上げるのかと言うと、色々と想像の膨らむ面白い有報だからです。

 さて、有報を見ていきましょう。

まずは、事業の内容(第一部-第一-3)をみましょう。

当社グループは、当社(株式会社レッド・プラネット・ジャパン)、連結子会社6社(株式会社レッド・プラネット・ホテルズ・ジャパン、チューン那覇匿名組合、RPJ名古屋錦合同会社を営業者とする匿名組合、合同会社レッド・プラネット・アンカンを営業者とする匿名組合、Red Planet Hotels Manila Corporation、合同会社RPJ1)で構成されており、ホテル事業を行っております。

 なお、当社は、前連結会計年度より、報告セグメントの区分を「ホテル事業」の単一セグメントに変更しております。詳細は「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 注記事項(セグメント情報等)」をご参照ください。

 ホテル事業が単一セグメントですから、RP社はホテル事業だけをやっている会社なのだとわかります。続けて、事業系統図も以下に引用しましょう。

 この図から、この会社は純粋持ち株会社(ホールディングス)であって、したがって、単体の財務諸表を見ても、あまり得られるものがなく、連結財務諸表を見なければならないことが分かります。

 さて、次に色々と想像の膨らむ面白い部分です。ではこの会社はどのような沿革をたどってきたのでしょうか。そのまま、引用します。

【沿革】

1999年6月音楽CD及びレコードの企画・制作及び販売を目的とし、神奈川県大和市にダイキサウンド株式会社(資本金10,000千円)を設立
1999年12月CDプレス業務を開始
2003年10月当社並びにレコードメーカー12社が発起人として任意団体インディペンデント・レーベル協議会を設立、本社内に事務局を設置
2004年11月日本証券業協会に株式を店頭登録
2004年12月日本証券業協会への株式の店頭登録を取消し、株式会社ジャスダック証券取引所に株式上場
2005年11月新規事業への設備投資等を目的として第1回無担保転換社債型新株予約権付社債の発行による1,500百万円の資金調達を実施
2006年2月中華人民共和国における新規事業の展開のため現地に北京至高科技有限公司を設立
2006年4月洋楽CDの日本国内における流通等を目的として、アメリカ合衆国にDaiki Sound International,Inc.を設立
2007年6月第三者割当増資により297百万円の資金調達を実施
2007年8月Daiki Sound International,Inc.を解散
2007年11月北京至高科技有限公司の全持分を譲渡
2008年5月仕入債務の決済資金の確保を目的として、第三者割当増資により278百万円の資金調達を実施
2009年3月第三者割当増資により199百万円の資金調達を実施
2010年4月ジャスダック証券取引所と大阪証券取引所の合併に伴い、大阪証券取引所JASDAQ市場に上場
2010年10月大阪証券取引所(JASDAQ)、同取引所ヘラクレス市場及び同取引所NEOの各市場の統合に伴い、「大阪証券取引所JASDAQ(スタンダード)」に株式を上場。
2010年12月第三者割当増資により204百万円の資金調達を実施
2011年3月持株会社制への移行に伴い、会社名を株式会社フォンツ・ホールディングスとする
2012年12月親会社のミネルヴァ債権回収㈱所有の当社A種優先株式の一部、91,700株をRed Planet Holgings Pte Ltdへ譲渡
2013年1月Red Planet Holdings Pte Ltd社所有のA種優先株式91,700株を普通株式に転換
2013年4月新たな事業(ホテル事業)の開始及び信託受益権(固定資産)の取得
2013年4月Red Planet Holdings Pte Ltd社と業務提携の基本合意書締結
2013年4月当社第1回ライツ・オファリング(ノンコミットメント型/上場型新株予約権無償割当て)を発表
2013年7月当社第1回ライツ・オファリングにより行使比率98.3%、調達資金681百万円
2013年7月2013年7月16日付で行われた大証の現物市場の東証への統合に伴い、東京証券取引所JASDAQ(スタンダード)へ株式を上場
2013年8月沖縄那覇に「チューン那覇沖縄」(現、レッドプラネット 那覇 沖縄)第1棟目ホテルオープン
2013年12月当社第2回ライツ・オファリングにより行使比率91.39%、調達資金2,010百万円
2014年1月商号変更により会社名を株式会社フォンツ・ホールディングスから株式会社レッド・プラネット・ジャパンとする
2014年4月名古屋中区錦のホテル用地取得
2014年7月第三者割当による新株式及び新株予約権発行を決議、総額約2,750百万円
2014年7月東京五反田のホテルロイヤルオーク五反田(既存ホテル)を取得 総額約1,371百万円
2014年7月株式の追加取得及び増資引受契約により飲食事業を展開する株式会社キューズダイニング、株式会社VALORE、株式会社スイートスターを連結子会社とする
2014年9月株式の取得によりSweetstar Asia Limitedを連結子会社とする
2015年1月子会社の設立により、株式会社アール・ピー・エフを連結子会社とする
2015年2月会社分割(簡易新設分割)により株式会社レッド・プラネット・フーズを連結子会社とする
2015年3月子会社の設立により、Kyochon Asia Development Limited、Magnolia Bakery Korea Limitedを持分法適用関連会社とし、Sweetstar Hawaii,LLCを連結子会社とする
2015年5月子会社の設立により、株式会社アイアン・フェアリーズを連結子会社とする
2015年6月子会社の設立により、株式会社チキン・プラネットを連結子会社とする
2015年9月株式の取得により株式会社フード・プラネット(旧 ㈱アジェット)を持分法適用関連会社とする
2016年6月飲食事業を運営する当社連結子会社の株式を株式会社フード・プラネットに譲渡し、飲食事業を売却これにより、株式会社レッド・プラネット・フーズ、株式会社キューズダイニング、株式会社キューズマネージメント、株式会社スイートスター、Sweetstar Asia Limited、株式会社アール・ピー・エフ、Sweetstar Hawaii, LLC、Nitrogenie Hawaii, LLC、株式会社チキン・プラネット及び株式会社アイアン・フェアリーズの合計10社を連結の範囲から除外するとともに、Kyochon Asia Development Limited(香港法人)及びMagnolia Bakery Korea Limited(香港法人)の合計2社を持分法適用の範囲から除外
2016年9月第三者割当による新株式及び第7回新株予約権の発行を決議 総額約8,100百万円
2016年12月子会社の設立により、合同会社レッド・プラネット・アンカンを連結子会社とする
2017年2月ディストリビューション事業を運営する当社連結子会社のダイキサウンド株式会社の全株式を売却し、同社を連結の範囲から除外
2017年6月株式会社フード・プラネットの全株式を売却し、同社を持分法適用範囲から除外
2017年10月持分法適用関連会社であるRPJ名古屋錦合同会社を営業者とする匿名組合が連結子会社に異動
2017年10月愛知県名古屋市にレッドプラネット名古屋錦を新規開業
2018年6月北海道札幌市にレッドプラネット札幌すすきの南を新規開業
2018年6月子会社の設立により、Red Planet Hotels Manila Corporationを連結子会社とする
2018年11月グリーンオーク・インベストメント・マネジメント株式会社との合弁事業に出資する
2018年12月匿名組合の設立により、合同会社レッド・プラネット・アンカンを連結の範囲から除外する

 そう、この会社は元々「音楽CD及びレコードの企画・制作及び販売を目的とし」て作られた会社なのです。それが、いつホテル事業を始めたかというと、2013年4月です。その前年の2012年12月に親会社のミネルヴァ債権回収㈱所有の株式をRP社に譲渡しています。

 このミネルヴァ債権回収とはどんな会社なのでしょうか。会社ホームページより、引用します。

当社は、2002年8月22日に設立された債権管理回収業を営む企業、いわゆるサービサーです。 サービサーとは、従来弁護士法により弁護士以外の者がこれを業として行うことを禁止されていた債権の管理回収業務について、債権管理回収業に関する「特別措置法」(以下、「サービサー法」と略称します)の施行により、特例として法務大臣の許可を受けてこれを行うことができる会社です。

約100社のサービサー会社の多くが、金融機関が保有していた不良債権を譲受または委託を受けて、債権者となってその回収を行うことを主な業務としています。一方、当社は、サービサー機能を活用して、主に過剰な債務に悩む中堅・中小企業の事業再生・再チャレンジ支援を会社の使命としております。

http://www.minecoa.com/greeting.html

 つまり、RP社の前身のダイキサウンドは経営が傾いてしまい、事業再生を生業とする企業に救済されたわけです。ダイキサウンドはCDの企画販売、それもインディーズ系を取り扱っていたようですから、CDの売上不振の影響をもろに被ったのであろうことが推測出来ます。(なお、ダイキサウンドは売却され、同名の別法人として現在も営業を続けています。)

 ダイキサウンドを買収した企業は、シンガポールを拠点にホテル事業を営むRed Planet Holdings Pte Ltd(以下、RPホ社)です。そして、ダイキサウンドをレッド・プラネット・ジャパンと社名変更して上場継続しているという流れです。

 買収後すぐに祖業であり主力のCD部門を売却してホテル事業を始めていることをみると、裏口上場を疑いたくなります。

 裏口上場とは、正規の上場手続きを経ないで、上場企業を買収することで、上場状態になることを言います。

 上場していれば、色々と公開しなければならないわけですから、なぜこのような形をRPホ社が取ったかは正直分かりません。

 2013年にライツオファリングを2回行うことで、30億近い資金を調達しています。ライツオファリングとは、株主割当増資の一種です。新株予約権を株主に無償で交付します。株主が権利を行使して、払い込みを行うと、その分が調達資金となります。

 おそらく、ライツオファリングでRPホ社をメインに新株予約権を交付して、即座に権利行使したのでしょう。ライツオファリングは上場していなければできませんから、投資の方法として、こうした手法を使うことでなにか税務上のメリットでもあるのでしょうか。

 経営者が財政状態や経営成績をどう考えているのか、ずばりわかる箇所があります。それが、経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(第一部-第2-3)です。

 この分析を読むと、開示担当者は会社のアピールポイントを盛り込んでくれていることが分かります。

2019年のラグビー・ワールドカップを前に日本の観光市場は急速に拡大を続け、2020年の東京オリンピックまでに来日観光客数4000万人という政府目標も十分に達成できるという見方も出ており、当社グループとしては2019年度以降についてもさらなる成長を見込んでおります。

 こうした記述からは、東京オリンピックに向けて確実にホテル需要が高まっていくことを踏まえて、外国企業が日本へ投資したことが伺えます。実際にはまさかの新型コロナウイルス感染拡大となり、RP社の目論見は外れてしまったわけです。

さて、ざっと企業の概要を掴んだらいよいよ経営指標等の推移を見ていきましょう。2016年に決算期を変更していますから、単純な比較はできませんが、ざっと眺めたときに、

  • 基本的に経常損失を出している。
  • キャッシュフローの動きから、借入で集めた資金で投資に回し、営業活動による収入は後回し、にしていることが分かります。

 ここでさきほどの、経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析を思い出すと、RP社は東京オリンピックを見据えていたわけです。東京オリンピック開催前にホテルは開業しておく必要があります。ですから、「借入で資金を集めて、どんどん投資して、累積赤字は東京オリンピック以降回収していく。観光需要は増大していくはずだから、十分に元は取れるはずだ」と、こういう目論見でいたものと思われます。

 ということは、2020年の有報を見るまでもなく、RP社は現在かなりの苦境に追い込まれているだろうことは容易に想像がつきます。しかも、ホテル事業以外は売却してしまっていますから、収益源をほかに探ることが出来ません。このままコロナウイルスの感染拡大が抑えられないと、資金がショートして、折角開業したホテルを安値で売却せざるを得なくなるでしょう。

【今日の分析で得られたこと】

  • 収益を見込んで投資する際、債務を利用するかどうかは慎重に判断する。
  • 当初の目論見が一つ外れても資金繰りに致命的な影響を与えないように、分散投資する。
最新情報をチェックしよう!